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2025/07/09

Creepy Nutsインタビュー ディレクターズカット版!

7月4日よりついにアニメ『よふかしのうた season2』が放送スタート! 少年サンデー31号(7/2発売)ではOPテーマを担当する超人気HIP POPユニット・Creepy Nutsが表紙&グラビアで登場! OPテーマ「Mirage」についての録り下ろしインタビューでは、Season1に続いてSeason2のOPテーマを担当する心境や、「Mirage」の制作過程など赤裸々に語ってくれました。

31号に掲載されたインタビューを大幅収録したディレクターズカット版を大公開です!

Creepy Nuts

──「週刊少年サンデー」でHIPHOPアーティストが表紙を飾るのは史上初だそうです。

DJ松永(以降・松永)初めてっていうのは光栄ですよね。

R-指定(以降・R)不思議な感じですけど、どんな表紙になるのか楽しみです。

──今回の撮影はいかがでしたか。

R積み上がった単行本を見ると「この巻の表紙、このキャラやったなぁ」とか改めて思い出すことができて良かったです。

松永背景の色も素敵でしたね。

──撮影中、「Rさん、こういうの(積み上がった本)崩しそう」と松永さんがおっしゃっていましたね。

Rそうなんです、僕、よくやるんですよ。

松永どこかにぶつけたり、何かをこぼしたりね。

Rでも今回は全然大丈夫でした(笑)。

──『よふかしのうた』Season1に続いてSeason2もOPテーマを担当する率直な心境を教えてください。

R原作がそもそも我々の楽曲(『よふかしのうた』)からインスパイアされてできたということで、Season2も担当させて頂けるのは嬉しかったです。それと同時に、これまでも夜についていっぱい曲を書いてきたし、どうしようかなぁと思いました。

松永Season1の時も同じことを思ったよね。

Rうん。Season1の『堕天』と『ロスタイム』を作った時点で、俺の中で夜については書き切ったぞと思っていたんです。まあ、そう言いながら最新作のアルバムもね、収録曲のシチュエーションはほぼ夜なんですけど…(笑)。

松永逆に僕はサウンドなんで全然イケるなって感じでした。サウンドって夜のつもりで作った曲でも「これ、昼の曲です」って言って世に出したら「確かに昼の曲だ」と思ってもらえるだろうし(笑)。でもRさんは言葉で表現しないといけないからね。『ロスタイム』を作った時も「夜、もうないよ〜!」って言ってましたもん。

R『ロスタイム』では自分の夜を彩るいろんな“人物”とか街の情景を書いたんですが、その時から自分も人間としていろいろ変化があって。夜についての考えも変わってきたので、今回の曲ができたっていうのはありますね。

──『よふかしのうた』Season1(2022年)から現在まで、自分自身が変わったと思うことはありますか?

松永だいぶ変わったよね。Rさんなんてご家庭ができちゃって。

Rなのに、やねん。普通は家族ができたら人って変わっていくんちゃうんか、俺は変わられんのか、なんでやねん! って。

松永家庭ができるとさ、強制的に社会との接点が生まれるよな。自分より社会性がある人と生活を共にするわけだからさ、家族を無視するわけにはいかないじゃん。子供が保育園に通って…とかなってくると。

Rだから、最近は昼が一番抜け落ちてしまってるかも。夜に曲を作ったりして、朝になって子供を保育園に送る準備をしたりいろいろしてから寝るっていう。

松永俺は変化なしですね。停滞です!(笑) でも、3年前はもっと音楽以外の仕事をたくさんしていましたね。2023年の春に音楽以外の仕事をセーブして、音楽活動もちょっとゆっくりするっていう働き方改革をしたので、それが一番デカいですかね。
仕事しかやってこないままに気づいたら30歳超えていたので、時間ができて、改めてやりたいことをスマホに箇条書きしたんですよ。映画を見るとか、旅行するとか、山に登るとか。でもどれもあまりしっくり来なくて。

──実際に何かされたとか?

松永1人で石垣島に行ってみたんですが、旅行っていうか移動しただけ、背景が変わっただけみたいな。こんなんで果たして俺は旅行したと言えるのか? と思って、スマホのチェックリストにチェックつけられなくて。

R石垣島に行って、普通にブラブラしただけ?

松永石垣島の海沿いをブラブラして、その辺にいた猫をかわいいな〜って眺めて。僕、家で猫を飼っているんですけど、これじゃ家と同じじゃん! と思って。スマホいじって、猫をかわいがって。

R団体の旅行客に「混ぜてーな」って言えばよかったやん。

松永本当にそうだね。石垣島のことあんまり知らないままにホテルも予約して。勝手なイメージで自然とか、人里離れた場所をイメージして行ったんですけど、予約したホテルがめっちゃアッパーで、ナイトプールとか付いてるところだったんですよ。泊まってる人もカップルとかファミリーとか外国人観光客ばっかりで。もうやることないから、1人でずっとインスタの“親しい友達”にストーリーを上げ続けてた。デジタルデトックスするつもりで行ったのに、人生で一番インスタやってた。

R何してんねん。一番やったらあかんことや。

松永結局、音楽やってる時が一番充実感あるなぁと思っちゃって。よくないですね。それ以外のものが見つけられなかった。自分には音楽しかないことを分からせられました。

──Season2のオープニングテーマ『Mirage』は、どのようなコンセプトで制作されましたか?

Rこれは自分と夜の話でもありつつ、『よふかしのうた』のSeason1とSeason2で描かれているものの違いも意識して書きました。Season1では、夜ふかしをし始めた頃のワクワク感とか、夜の持つカラッとした干渉してこない優しさが描かれている気がしていて。思春期の子供達の避難場所としての夜、みたいな側面が大きかったのかなと原作を読んで思ったんです。
一方、Season2に登場する夜はもっとじっとりしているというか。さっき言ったワクワクの残りかすというか、燃えかすみたいなものが積もっていく場所でもあると思うんですよね。未練や後悔の投棄場所というか。まさにあれですよ、“切ない気持ちの”…

R /松永“切ない気持ちのゴミ捨て場”。

Rそうそう。有名なHIPHOPのフレーズがあるんですけど、まさしくそういう感じです。未練や後悔がいっぱい溜まっていくことによって夜が湿り気を持つ。その夜と折り合いをつけようとしている大人の話がSeason2のメインなのかなと。
そしてまさに今、自分的にも夜とどう折り合いをつけるかという段階に差し掛かっているので、自分の話としても書くことができました。やっぱりね、歳をとってくると朝とか昼の大事さが分かってくるんです。子供の頃はあんなに夜が大好きだったのに、朝起きて昼に活動するのには意味があったんやと思い始めて。

松永確かにね。

Rだからもう、俺はこいつ(夜)と手を切るんや、みたいな。こんなわけわからん時間に起きて、気づいたら朝が来て…みたいな生活は今日でやめるんやと思いながらも、気づけば明日も夜に活動してる。ズルズル関係を続けてしまうみたいな。

松永ええ? 昼がいるのに?

R昼がおるからや。俺にはもう、朝と昼があるから。リリックにも書いたんですが、「家庭があって生活があって」みたいな。俺にはもう昼に動かないといけない理由があるんやという。だから夜、もう連絡してこんといてくれ!っていう。

松永夜からお前に連絡してるわけじゃないけどな。お前が夜にアクセスしてるんだよ(笑)。

Rいや、どっちからともなくや。気づいたらまた夜と一緒にいる。やめたいけどやめられない。

松永たまにアーティストのインタビューとかでさ、「僕は朝7時に起きて、まず運動して午前中から曲作りをします。そういう生活のほうがいい曲を作れますね」みたいに言う人がいるじゃん。でも、果たして本当かな?って思う。

Rそうよな。でも、俺はそういう夢みたいな生活を試みてんねん。

松永試みるよねぇ。そういう先人の言葉を受けてさ。

Rでも、全然無理やなぁ。

松永無理だよね。朝起きて曲なんか作れるわけがないんだから。でも、俺は深夜0時とか1時くらいには寝るんだけどね。

R…え? それで今までの発言してたん!?(笑)

松永(笑)。2時とか3時に寝るなんて不良すぎ! 逆に最近はね、23時くらいになってくると「今ここでスイッチを入れても、本格的にエンジンがかかるのはもう夜中だな」とか思っちゃって。せめて夜の7時くらいまでにスイッチ入れないとなって。

R順調に夜から抜け出していってるやん。

松永うん、だからRのこと、見下してるよ(笑)。

Rさっきはあんなに「お前の気持ち分かるで」みたいな喋り方をしてたのに…

松永昔の自分に重ねてた。そんな時もあったなぁ、若いな、懐かしいなみたいな。

Rじゃあもうちょっとで朝型になれるやん。

松永いや、でも昼過ぎまで寝てるんだよね。むちゃくちゃ寝てるだけ。

──松永さんはサウンド作りで意識したことはありますか?

松永もともと「アニメのタイアップだから」とか考えずに、無責任にそのとき作りたい曲を作っちゃうタイプなんですが、今回はよりオープニングっぽくないほうに振った感じがあるのかなと思いますね。アフロビーツなトラックを作りたくて、その中にメロ感もちょっとあるみたいなのを意識しました。楽器の話になっちゃうんですけど、スチールパンっていう楽器を使ってリフを作ったりして。

Rへぇ、そうなんや。

松永あとは最初にフルートの音色を入れていたんですが、それを抜かしてRさんにデモを送ったんです。そしたら「フルートはあったほうがいい」って言われて、それでフルートの音を入れ直して。

Rうん、あれはやっぱりかなり印象的というか。頭に残る。めっちゃいい。

松永フルートも、変なものを入れたかったんです。民族楽器の謎の笛みたいな感じ。あと、いつも歌詞ができあがってからイントロを作るんですが、今回はライターがキーワードになっていたので、イントロにはライターっぽい音を入れました。ライターの火がシュポッてついて物語に入っていくみたいなイメージです。

──たしかに第一印象でどこか異国っぽい雰囲気を感じました。

松永フルートだけではなく、ドラムもコード感もスチールパンのような楽器も、どこか癖があるものを選んでるんですよね。それを組み合わせると、出来上がった時に絶妙に聴いたことのないサウンドに仕上がります。そういうものが自分は好きだし、聴いたことのない曲を作りたいので、意識的に一つ一つの音選びから、オリジナルなものを選ぶようにしています。

──Season2のオープニングテーマ『Mirage』の制作で苦労したところや逆にスムーズにいったところはありますか?

Rスムーズに行ったのはメロディーとかバースのフロウとか。そういうところは自分も異国っぽさを意識していたので、そこはわりとすぐに固まりました。一番時間がかかったのは、夜をどう捉えるかというところですね。

松永今年の2月に発売したアルバムを作り終えてから『Mirage』の制作に取り掛かったんですが、自分の中に溜まってたアイデアとか意欲を、アルバムで1回全部使い切っちゃって。そういう中でもう一度集中するのが大変でした。作業的に曲を作るのはいくらでもできるんですけど、なんかこう、自分の中で「来た!」っていう、自分の能力の一歩先に行けたみたいな曲を作りたいので。それを作るために何度もトライ&エラーを繰り返しました。

──では最後に『よふかしのうた』ならびに「週刊少年サンデー」読者にメッセージをお願いします。

RSeason2に出てくる夜と折り合いをつけられない大人たちは、俺にとって他人事ではないです。『Mirage』は結果的に、作品とも自分ともリンクした楽曲になったと思います。原作ファンの人たち、俺らの楽曲を楽しんでくれてる人たち、どちらにとっても楽しんでもらえる楽曲になったんじゃないかと思います。

松永…俺、今気づいたんだけど、Rと全く逆だわ。朝と夜がなくて、昼しかない。

Rえ、最強ちゃうん、それ?

松永いやいや「1日短っ!」ってなるよ。朝も夜も無駄にして。

Rでも結局、人間が一番動いてる時間が昼やん。全ての店開いてるやろ?

松永開いてる、開いてる。

R陽の光も浴びれるやろ?

松永浴びてる、浴びてる。そう思うと、昼、マジ最高です(笑)!