高橋しん
Vol.1/2002年8月28日

 お久しぶりです。『きみのカケラ』楽しんでいただけてるでしょうか?
 サンデーでは以前、1996年のオリンピック応援コミック企画として「有森裕子物語」を描かせていただいて以来の執筆です。




 すでにいろんな所でお話しさせていいただいているのですが、私は大人になってから、殆ど少年まんがを読んでいません。子供の頃「マガジン」など少年まんがを読み育ち、高校で陸上部の友達に少女まんがも面白いことを教えてもらい、大学で駅伝部の寮の同僚の部屋に「スピリッツ」などの青年誌が転がっていてそれを読み、社会人になって漫画家デビューもして、ナムコで絵を描いたり、求人広告の会社の営業に走り回り、カラオケパブの店員として夜中までお客さんに接客したりお酒を作ったり、あわただしい中でまんがを描き続け、その間もいろんなジャンルのまんがに出会い、今に至ります。  今回少年誌で連載を始めるに当たって、イマドキの少年まんがを読んどいた方がいいですか? と担当さんに聞いた所、読まなくてもいいんじゃないですか、とのお返事をいただいたので、そういう知識は殆ど無しで描いています。ですからうちの事務所内でのプロジェクトのミーティングなどで「主人公はお腹がすくとこんな感じになっちゃって〜てゆうのはどう?」「先生、それドラゴンボールです」なんて事もしばしばですが、そのへんは有能なスタッフが気付いてくれるので、よけいなことに煩わされず自分はただこれがおもしろそう、と思うモノを描いていればいいのでかえって気が楽で、楽しんで作品を描いています。
 自分にとって少年まんがを描くための案内役は、ただ自分が少年だった頃に楽しんだモノです。小学生の頃イナカの市立図書館に通って読んだ少年向けの冒険小説やSF小説、戦記物の数々。マーク・トウェイン…トム・ソーヤーやハックルベリー・フィン(友達と一緒にマジでいかだを作って、天塩川下ろうとしました。即沈没でしたけど…)。中学生の頃に読んだ星新一さんのショートショートなど。まんがなら「おれは鉄兵」「キャプテン」「つりキチ三平」「マカロニほうれん荘」「青い空を白い雲がかけてった」「がきデカ」「ブラックジャック」。テレビアニメなら「タイムボカンシリーズ」「宇宙戦艦ヤマト」「ガンダム」…サンデーの読者の皆さんには殆どなじみのないモノだと思いますが、私が皆さんと同じ年代の頃夢中になって読んだり観たりしたものです。
 あ、もちろん今のサンデーの作品はみんな読ませていただいてます。お気に入りはたくさんありますが『金色のガッシュ!!』は楽しくて大好きです。

 少年時代というのは繰り返したり、残したりするモノではなく、ただただ通過するものだと思っています。少年である、ただその瞬間に夢中になれるモノにありったけの力を注ぎ、その好奇心と冒険心と幼い知的興奮を満足させるためならなりふり構わなかった時代、すべて許された時代。今回の作品では、ただただそんな時代の少年少女のために、そんな時代の主人公たちが懸命にがんばる、ただただ楽しめる作品を描いてみたい。自分自身「高橋しん」の描いた「少年まんが」を読んでみたい。それだけのために描きたいと思っています。
 私は今まで(サンデーの読者の皆さんはあまり聞いたことがないと思いますが)『いいひと。』『最終兵器彼女』(今、衛星放送でアニメをやっています)『わたしたちは散歩する』それと短編集を2つ、『好きになるひと』『さよなら、パパ。』という作品を描かせていただいています。でも『きみのカケラ』は今までの作品とは全く楽しみ所の違う、ジャンルも世界観も違うまんがです。もしも今までの作品を気に入ってくださっている方の中に、『きみのカケラ』も楽しんでいただけるかたがいてくださったら、それはとても嬉しいのですが、そこに「合わせる」事は全く考えていません。サンデーの読者さんのために、ただただ自分が少年の頃そうだったように、単純に、まんがを読んでいるときだけでも周りのことも、宿題も、いやなことも、忘れて楽しんでもらえるように。それだけのためにがんばってまんがを描きたいと思っています。

 もう『きみのカケラ』のストーリーは最初から最後まで決まっています。最終的にどのくらいの話数の作品になるかはわかりませんが、そんなには長くない話です。少年である時間は本当に短く、かつ密度の濃いものだからです。その限られた時間の中でしか出来ないこと。大人にとってみたら軽く笑われてしまうようなモノが、すごく大事だったこと。自分の目の前の四方、数キロメートルだけが世界の殆どすべてだった頃。そんな中で「今しかない時間」を一生懸命生きる主人公たちを見ていただきたいからです。

 『きみのカケラ』楽しんでいただければ嬉しいです。

 もし興味がおありでしたら、私の事務所「SHIN Presents!」のスタッフが作っているwebページがあります。良かったらいらしてくださいね。



http://www.sinpre.com/

 一生懸命まんがを描きますので、よろしくお願いします。


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