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まんが家バックステージ

サンデー作家陣

久米田康治

Vol.35/2002年12月4日

 まぁ今更言うのもなんだが、描いてる途中で似たような話を昔描いた事に気づいた。しまった適材適所の時だ。もはや時間的に直すのは厳しい。あとは、なんとか気づかれないよう切り口を変えるしかない。
 もともとネームを描かない人間なんでやってやれない事はないが、さすがに凹む。苦悩してるとスタッフが助け舟… 大丈夫ですよ、今に始まった事じゃないですしほら、これとこれも、これとこれも同じテーマじゃないですか。
 …って、言われてみれば確かにそうだ。死にたくなるので自分の描いたものは読み返さない主義だったのでまったく気づかなかった。
 自分の描いたものくらい覚えてろっつうの! 読者の突き刺すような声が聞こえる。
 いや、でもこれは自意識過剰ですね。そもそも3年も前にぼくの描いたまんがなぞ、誰も覚えていないのです。まかり間違って昔読んでた人がいても、その人にはすでに飽きられ読み飛ばしの対象。
 失態をつっこまれる事もなく、賛美も批判もなく気にされない、石ころ帽子をかぶったまんが描き。
 もし万が一気づいた読者がいたのなら、言い訳させてくれ。人間は悲しみや苦しみや辛い事を忘れられるから生きていけるのだ。
 もし、昔描いた駄まんがを記憶していたなら、羞恥に耐えられず迷わず死を選んだだろう。忘れたからなんとか生きていられるのだ。
 自分にしてみれば珍しく前向きな考えだと思うのだが、いかがだろう。
 まぁネタとしてサンデーを最適化した場合、『改蔵』は最適でないので削除、と描くと思いましたか?
 そうは思いません。
 気にされてないんですから、眼中にない対象外ですから、そう自分はめったな事じゃ誰にも気にもされない冷蔵庫の裏のチリ河原の小石。
 都会の死体。
 気にされずただ朽ち果てていく運命。

 もし偶然気づき哀れに思ったのなら小さな墓標を立ててくれ、場所は誰にも気付かれない場所に…
 そして墓標にこう刻んでくれ。

気にされないまんが描き気にされず朽ち果て
永久に気にされる事なくここに眠る。

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