浜中明
Vol.92006年7月19日

前回の続きです。

そんなわけで陽気なブラジル人のマルコは、自分から飲みに誘っておいてお金がないといいだしました。
人間の目とは不思議なもので、とたんにマルコの笑顔がウソくさく見えてきます。
タカられたらかなわんと思ったボクは、とりあえずその場をごまかそうと思い、真剣な表情をつくっていいました。

「ねえマルコ。ボクはキミと本当の友達になりたいんだ。だから、いきなりお金の貸し借りなんてしたくないよ…(中略)…これはキミの為にいっているんだぜ?」
中略の部分には適当に歯の浮きそうなセリフをいれて下さい。その場しのぎのデマカセなのでボクもよく憶えてません。

ボクが一通り喋り終わると、マルコは突然、泣き出しました。

「おー、アマナカ。オマエ、マルコのこと大事に思ってくれるんだナ。アマナカ、ありがとう。わかたヨ、今日は我慢ヨ」

困ったことに必要以上にマルコの琴線に触れてしまったようです。

「アマナカ、ごめんネ。代わりに、アマナカにマルコの宝物見せるよ」

マルコは涙をぬぐいながら、ポケットの中をまさぐり、2枚のメダルを出しました。

「マルコがお酒を一日我慢するとこのメダル。一か月我慢すると、このメダルをもらえるヨ。マルコが頑張った印、マルコの宝物」

え? これって、まさか…

「ちょ、ちょっとまて。もしかしてマルコって、アルコール依存症の治療してない?」
「そーだよ。マルコ、アルチュー」

お前酒飲んじゃダメじゃん!
これは本当にビックリです。呆然とするボクをよそに、マルコは妙にすっきりした顔でこういいました。

「アマナカ、俺たちはソウルメイト。もしトーキョーで寂しいことや悲しいことがあったら俺んトコこい」

なんでこの流れでそんなセリフが出るの? ってゆーかソウルメイトって何?

どうやら、マルコのいうソウルメイトとは『酒をオゴってくれそうな人』という意味のようで、その後、マルコは隙あらばボクに酒をオゴらせようとし、ボクがそれをかわすという日々が続きました。

ただ、マルコのねだり方というのは大変味があって、

「今日ね、道でネコが死んでたヨ。悲しいね、アマナカ、マルコにお酒をオゴって慰めて」

なんてことを真面目な顔でいうのです。
結局、一度もオゴったことはないのですが、そんなマルコとのやりとりは今思い出しても、クスクス笑ってしまうような楽しいものでした。ビックリさせられることも多かったけど、良い出会いだったと思います。

ワールドカップのブラジル戦を観ていて、ふと彼のコトを思い出しました。
今、彼がどこで何をしているかは知りませんが、あの陽気なウソくさい笑顔のままだといいナァなんて思います。


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