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まんが家バックステージ

サンデー作家陣

藤田和日郎

Vol.37/2009年4月1日

 元気ですか?
前の前あたりに漫画家のエネルギーの話をしましたが、今回は本の話。
『月光条例』はおとぎばなしのお話なので、それに関する本を読みますわな。色んな子ども向けの本、大人を対象とした原典翻訳の本、そして解説や評論の本、民話や読みきかせの本、戯曲や学術の本… そしてヘナヘナヘナと面白本を読みたくなるわけですよ。〈おとぎばなし〉は面白いのに、何でそれを分析したり解説したりするととたんに退屈になっちまうのかね(勉強になるし、刺激を受けて新しいアイディアが出たりもするんだけど… そしてだからこそ読むんだけどね)。
そんなこんなで、特に最近は児童書を読むことが多くなってきてます。〈おとぎばなし〉がへんちくりんになる漫画を描いていると、なるべく子供のために書かれた本の近くに行きたくなるようです。松谷みよ子先生の民話の本(これは面白いです)や、『まえがみ太郎』が大好きだったせいもあるかも。

斎藤隆介先生の文と滝平二郎先生の切り絵の『モチモチの木』や『ゆき』が死ぬほど好きだったせいかも。
この間は、はやみね かおる先生の『ぼくらの先生!』でじんとしました。いえ、泣かせるためのむつかしいお話ではなく、ミステリーの形をとっているんですが、もと校長先生の持った過去の疑問を、その奥サマがその暖かい視線で解いてみせるといったものです。
でも、良かった。ガチャガチャしたストーリーをいつも描いてる分だけ自分は、この本に流れる、ていねいでゆっくりとした空気が好きです。児童向きといってもとんがってドライで人生そんなもんさ的小説がいっぱいあって、そういうハデなものに読者が向かうかもしれない中、本当に子供のため、そして大人になってしまったけれど全て忘れた訳ではない読者のため、この本は書かれているような気がします。そういうプロフェッショナルな作家さんは、本当に素敵だなァと思います。
娘のユウケが、『名探偵夢水清志郎』シリーズを喜んで読んでいた頃から、「何かいいなァ」と思っておりましたが、やっぱり実際にその作品に触れてみて、その良さを実感しましたね。

あと、岡田 淳先生の『フングリ コングリ』も面白かったなァ。図工室に来た、チョウやカエルに図工の先生が、ちょっと不思議なお話をする…というオムニバス物語だけど。それがみんな楽しいのよ。大変なコトにならないで、すごく居心地のいいバランスなんだなァ。ふわっとお日様が差したような。
岡田先生は、『二分間の冒険』で自分のド肝を抜くような冒険ファンタジーを書かれていらっしゃるし、緩急自在だなあ(男の子が迷い込んだ異世界での冒険、テーマもキッチリ、ヒロインもいる、戦う方法、勇者の伝説とそのからくり、こんなにしっかり短く書かれた児童ファンタジーの冒険ものはないかもしれません。漫画家志望者の方は読んどくといいかも。テーマやキャラクターのもの凄い勉強になりますぜ。勉強といってもごっつい面白いけれど)。

いっけねえ。音楽といい本といい、こういう話になると長くなるなァ。
『月光条例』赤ずきんのお話は、この漫画を考え始めた頃からあったので、勢い力が入りました。なつかしい『からくりサーカス』の故コロンビーヌを描いてる気分にも近いカンジでしたが、さあ皆さんいかがでしたでしょうか?

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