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まんが家バックステージ

サンデー作家陣

藤田和日郎

Vol.27/2008年3月26日

 「しまったっ!」
何ということだろう。またアレがわからなくなってしまった……!
アレは大昔、『うしおととら』の時分に小夜(さや)という登場人物を描く時、さんざ練習したもんであるが、何年前だそんなモン的記憶力減退。
今は夕方4時半。ならばムスメは友が遊びに来ていて家にいるハズ!
仕事場を飛び出し自宅にかっ飛ぶ。
「有毛(ゆーけ)! 有毛!」くつをつま先から蹴り飛ばしながら、中坊のムスメを呼ばわる。
「へー。なにー。」
こいつはオヤの一大事に何というとんまな返事をしやがる。
「み、みつあみ! 三つ編みがわからん、どうなっとるんだ。教えてくれ。」

そうだアレとは、女の子の髪の毛を束ねる方法の中でも特にかわいらしい「みつあみ」のことだ。何度も描く機会があるのだが、その都度忘れてしまい、それが字のまんま3本を寄り合わせてできていることも脳内から消えてしまう。だが、中学女子ならば、それは当然の知識として備えているハズであり、また、日々食事の糧となる父親の仕事のために捧げる軽い情報であることに違いない。

「ほら、ちょっと みつあみ やってくれ。タイコの達人のバチいつまでも持ってないで!」
色ちがいの手ぬぐいを3本ふりまわして叫ぶ父にムスメは言うた。
「あちゃー。うち みつあみ わからないんだよねー。」(知ってるかね? 流行か知らないが、僕が住んでるあたりの女子は自分のコトを「うち」と呼んだりするんだ。なぜか。)

ぽとふ。
僕の手から手ぬぐいが落ちた。
だめだ。母親は買い物中だ。これでもうみつあみを教えてくれる者はない。担当のありいどんには「カラー4ページ。ええ! 夜にはできますよ。」なんて、さわやかに言ってある。これで、「ラプンツェルの長いみつあみの髪がわからなかったから、できませんでした。。。」なんて今さら言えるだろうか。
ああ、どうせできないのだったら、さわやかに言うんじゃなかった…。
タイコの達人のバチをかまえ、トッポをのん気に食いはじめた有毛の横で、絶望のあまりヒザをつこうとした時。
「みつあみ、できるっすよ。」
カオを上げるとムスメの友人 すーさんではないか!
すーさんは3本の手ぬぐいをスルスルと編みこんで僕の前に置いてくれた。
「スマン! 助かった!! ありがとよ。」
僕は涙をこぼし、その手ぬぐいをおしいただくと仕事場にとって返した。
もちろん、罰として自分のムスメのトッポをすべて食いつくすことも忘れなかった。
よってでき上がったのが、『月光条例』第1回のカラーページ3ページ目うしろの方の長い三つ編みである。
すーさんがいなければ、このカラーはできず、ありいどんも僕も泣いていたのである。
改めて、ここにお礼を言いたい。
すーさん。さんきゅー。
略すと すーさんきゅー。
……オヤとしてキラわれそうな文章になっちまった。

さあ、第1回始まりました。
いかがでござんしょう?

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